イボ痔を自分で薬で治すときの注意点

1. はじめに

イボ痔とは?その症状や原因について簡単に説明
イボ痔は、正式には「痔核(じかく)」と呼ばれ、肛門付近の血管が腫れてできる状態を指します。特に「内痔核(ないじかく)」と「外痔核(がいじかく)」の2つに分類されますが、一般的に「イボ痔」と呼ばれるのは、この痔核のことです。内痔核は肛門の内側に発生し、初期段階ではあまり痛みを感じないことが多いですが、進行すると出血や脱出が見られます。外痔核は肛門の外側にできるため、痛みやかゆみが強く現れやすいです。
症状と原因
イボ痔の主な症状は、肛門周辺の違和感、出血、腫れ、かゆみ、場合によっては激しい痛みなどです。原因としては、長時間の座位、便秘、妊娠や出産、無理な力みなどが挙げられます。これらの要因が肛門の血流を悪化させ、血管が腫れて痔核が形成されます。病院に行く前に自分で治療を試す理由
痔核は初期段階では比較的軽度の症状が多く、市販薬を使って自宅で治療を行うことで、改善することがよくあります。特に症状が軽い場合、適切な薬を使い、生活習慣を見直すことで完治する可能性があります。そのため、恥ずかしさや時間の制約から病院に行きにくいと感じる場合でも、市販薬を利用して自分でケアを試みることは有効です。

2. 市販薬の種類と選び方

外用薬(塗り薬、座薬)の種類
イボ痔の治療には、主に「外用薬」が使われます。市販されている外用薬は大きく分けて、塗り薬と座薬の2種類です。それぞれの特徴を理解して、症状に合ったものを選ぶことが重要です。

  • 塗り薬
    塗り薬は、肛門周辺に直接塗布するタイプの薬です。主に、外痔核や肛門周辺のかゆみ・痛みを緩和するために使用されます。痔核の部分に直接作用するため、炎症や痛みをすぐに抑える効果があります。炎症を抑える「ステロイド」や、痛みを和らげる「局所麻酔薬」が含まれているものが一般的です。
  • 座薬
    座薬は、肛門内に挿入するタイプの薬です。主に内痔核に効果的で、肛門の奥まで薬効が届くように設計されています。出血や腫れを抑える成分が含まれており、挿入後に徐々に溶け出して効果を発揮します。使い方は少しコツが必要ですが、内痔核が原因の違和感や出血に対しては非常に有効です。
    症状に応じた薬の選び方
  • かゆみや痛みが強い場合
    かゆみや痛みが強い場合には、ステロイドを含む塗り薬を選ぶと良いでしょう。ステロイドは炎症を速やかに抑え、かゆみや痛みを短時間で緩和します。また、局所麻酔薬が含まれている場合、塗った直後から痛みが和らぎます。ただし、長期間の使用は避けるべきなので、注意が必要です。
  • 出血が見られる場合
    出血が見られる場合には、止血効果のある座薬や塗り薬が適しています。特に内痔核による出血は座薬が効果的です。血管を収縮させる成分が含まれている薬を選ぶことで、出血を抑え、症状を和らげることができます。
  • 腫れが気になる場合
    痔核が大きく腫れている場合は、抗炎症成分が含まれている塗り薬や座薬を選びましょう。腫れを抑えることで、痛みや違和感が軽減され、日常生活が楽になります。

3. 薬の正しい使い方

イボ痔の治療に使う薬は、正しい方法で使用しないと効果が半減するだけでなく、場合によっては症状が悪化することもあります。ここでは、塗り薬と座薬の正しい使い方とその注意点について詳しく説明します。
塗り薬の使い方:どのように塗布するか、タイミング
塗り薬は、外痔核や肛門周辺のかゆみや痛みを緩和するために使われます。以下のステップで正しく使用しましょう。

  1. 手を洗う
    塗り薬を使う前に、まず手をきれいに洗いましょう。肛門周辺は感染症のリスクが高いため、清潔な状態で塗布することが重要です。
  2. 肛門を清潔にする
    シャワーやお湯で患部を優しく洗い、清潔にします。洗いすぎて肌を傷つけないように気をつけ、タオルで軽く押さえるように水分を拭き取ります。
  3. 塗布のタイミング
    一般的には、朝と夜、排便後に塗布するのが効果的です。排便後に使う場合、肛門をしっかり洗浄し、タオルやウェットティッシュで優しく拭いてから塗りましょう。
  4. 薬を適量取り、患部に塗布
    指に薬を適量取り、肛門周辺の痔核や痛みのある部分に直接塗ります。必要に応じて、指サックや清潔なティッシュなどを使って塗布するのも良い方法です。
  5. 注意点
    塗り薬を使用してもすぐに症状が緩和されない場合は、頻繁に塗りすぎないようにしましょう。過剰な使用は、肌を傷つけたり、薬による刺激を引き起こす可能性があります。
    座薬の使い方:正しい挿入方法とコツ
    座薬は内痔核に対して効果的な薬ですが、挿入に少し技術が必要です。以下の手順で安全に使用しましょう。
  6. 座薬を冷やしておく
    座薬は体温で溶けるため、直前まで冷蔵庫に保管しておくと挿入しやすくなります。柔らかくなった座薬は扱いづらく、挿入が難しくなることがあります。
  7. 挿入前の準備
    座薬を使用する前に排便を済ませ、肛門周辺を清潔にしておきます。また、挿入前に手を洗い、清潔な状態で準備を整えます。
  8. 挿入の方法
    横になって片膝を軽く曲げた姿勢(横向きで足を引きつける姿勢)が最も挿入しやすいです。座薬の尖った方を肛門に向け、指でゆっくりと奥まで挿入します。深さは、指の第一関節が入るくらいまでが目安です。挿入後はしばらく横になり、薬が溶けて患部に行き渡るのを待ちます。
  9. 注意点
    座薬がすぐに出てきてしまう場合、挿入が不十分な可能性があります。深さに気をつけながら、指をしっかり使って挿入することが大切です。また、挿入後すぐに立ち上がると、薬が肛門外に流れ出ることがあるため、5?10分程度は横になって休んでから動くようにしましょう。
    使用頻度と注意事項
  • 塗り薬も座薬も、1日2?3回を目安に使用するのが一般的です。特に排便後は効果的に薬を使うタイミングですが、過剰な使用は逆効果になることがあります。
  • 1週間以上使用しても症状が改善しない場合や、むしろ悪化した場合は、病院を受診することを強くおすすめします。自己判断での長期使用は、薬に依存したり、別の疾患が潜んでいる可能性を見逃すリスクがあるためです。

4. 生活習慣の改善も大切

イボ痔の治療において、市販薬の使用は確かに有効ですが、生活習慣の改善も非常に重要です。痔核は生活習慣が大きく関わっているため、日常的な習慣を見直すことで再発を防ぎ、症状の悪化を防ぐことができます。ここでは、食事、排便の習慣、座り方などのポイントについて解説します。

食事の改善(繊維質を増やす、便を柔らかくする)

食物繊維の摂取を増やす
イボ痔の主な原因の一つは便秘です。便が固くなると、排便時に肛門に過度な負担がかかり、痔核が悪化します。便秘を予防するためには、食物繊維を豊富に含んだ食事を心がけることが大切です。

  • 野菜、果物、豆類、全粒穀物 などに多く含まれている食物繊維は、便のかさを増やし、排便をスムーズにする効果があります。特に水溶性食物繊維(オーツ麦やりんごなど)は便を柔らかくする効果が高く、便秘解消に役立ちます。
  • 一方で、不溶性食物繊維(野菜や全粒穀物など)は便の量を増やし、腸内の動きを活発にするため、便秘を防ぐのに効果的です。両方の食物繊維をバランスよく摂取することが重要です。
    水分補給を忘れない
    食物繊維を多く摂取するだけでは十分ではなく、水分補給も非常に重要です。水分が不足すると、便が固くなり、排便時に負担がかかります。日中こまめに水を飲むようにし、特に食事と一緒に水を摂ることで、便が柔らかく保たれます。

1日あたり2リットルを目安に水分を補給するように心がけましょう。特に運動や汗をかく季節には、さらに多くの水分が必要です。

トイレの習慣(長時間座らない、無理な力みを避ける)

長時間トイレに座らない
トイレで長時間座ることは、イボ痔を悪化させる要因となります。肛門周辺の血流が悪化し、痔核が腫れやすくなるため、トイレでの時間を短くすることが大切です。スマートフォンや本を持ち込む習慣がある場合は、注意が必要です。
無理な力みを避ける
排便時に強く力むことも、肛門に負担をかける原因です。スムーズな排便を促すためには、便が出るのを自然に任せることが重要です。もし便が固く、排便に時間がかかる場合は、食事や水分摂取を見直し、便を柔らかくするサプリメントや医薬品(マグネシウム製剤など)を利用するのも良い方法です。

適度な運動を取り入れる

長時間座りっぱなしの生活は、血行不良を招き、イボ痔を悪化させる原因になります。デスクワークや車の運転などで座る時間が長い場合は、定期的に立ち上がってストレッチをしたり、軽い運動を取り入れることが推奨されます。

ウォーキングやストレッチ、ヨガなどは、血流を改善し、便通を促進する効果があります。また、腹圧をかけすぎない適度な運動が、肛門への負担を減らし、痔核の予防に繋がります。

肛門周辺のケア

トイレットペーパーで拭く際の注意点
トイレットペーパーで強く拭くと、肛門周辺の肌が傷つき、炎症を引き起こすことがあります。便が硬いときや痔核が腫れているときは、優しく拭き取るか、ウェットティッシュや温水洗浄便座を使うのがおすすめです。特に、アルコールが含まれていない優しいウェットティッシュを選ぶと、刺激を避けることができます。
温水浴やシャワーで患部を清潔に保つ
肛門周辺を清潔に保つことも大切です。シャワーで軽く洗浄したり、ぬるま湯に浸かって血行を促進することで、炎症を和らげる効果があります。ただし、熱すぎるお湯は逆効果になる可能性があるので、適温を心がけましょう。

5. 薬では治らない場合の対処法

市販薬や生活習慣の改善でイボ痔を軽減できることは多いですが、症状が改善しない場合や悪化してしまった場合は、病院での専門的な治療が必要です。ここでは、病院に行くべきタイミングと、どのような治療法があるのかを解説します。

いつ病院に行くべきかの判断基準

以下のような症状がある場合は、早めに病院での受診を考えましょう:

  1. 1週間以上、市販薬を使用しても症状が改善しない
  • 市販薬を使っても痔核が引かず、痛みやかゆみが続く場合は、より専門的な治療が必要です。
  1. 出血が頻繁に続く
  • 痔による出血は比較的よく見られる症状ですが、頻繁に出血が続く場合や、血の量が多い場合は注意が必要です。大量の出血は貧血の原因にもなり、他の病気の兆候である可能性もあります。
  1. 激しい痛みや腫れがある
  • 特に外痔核が大きく腫れて痛みを伴う場合や、触ると硬いしこりのように感じる場合、血栓が形成されている可能性があります。この状態を「血栓性外痔核」といい、放置すると痛みがひどくなるため、早急な治療が必要です。
  1. 肛門周辺に膿や分泌物がある
  • 痔核が悪化して感染を引き起こしている可能性があります。膿や分泌物が見られる場合は、早急な医療介入が必要です。

専門的な治療法

イボ痔が進行し、自己治療では効果が出ない場合、病院ではさまざまな治療法が提案されます。痔核の状態や進行度に応じて選択される治療法には、以下のようなものがあります。
1. 保存的治療
初期の段階や軽度の痔核の場合は、病院でも市販薬と同様の外用薬や内服薬が処方されます。これに加え、日常の生活指導や食事療法が併用されることが一般的です。
2. 硬化療法(ジオン注射など)
硬化療法は、痔核に直接硬化剤を注射し、血管を収縮させて痔核を縮小させる治療法です。これにより、出血や痔核のサイズが抑えられます。この治療は痛みが少なく、日帰りで行えるため、比較的軽度の内痔核に適しています。
3. 結紮療法(ゴム輪結紮術)
結紮療法では、痔核の根元にゴムバンドを巻きつけて血流を遮断し、痔核を自然に壊死させます。時間をかけて痔核が縮小・消失するため、侵襲が少なく、日帰り治療が可能です。こちらも主に内痔核に対して行われますが、進行度に応じて適用されます。
4. 手術(痔核切除術)
痔核が非常に大きく、薬や他の治療法では効果が得られない場合、手術が検討されます。痔核切除術は、痔核を直接切除する方法で、外痔核や重度の内痔核にも対応可能です。手術後は入院が必要になることが多く、術後のケアも重要です。
5. レーザー治療
レーザーを使って痔核を蒸散させたり、切除したりする治療法です。切除手術と比べると痛みや出血が少なく、回復も早いとされていますが、症例によっては再発のリスクもあるため、医師と相談しながら適切な治療を選択します。

まとめ

イボ痔は、初期段階であれば市販薬と生活習慣の改善で治すことが可能ですが、症状が重くなると専門的な治療が必要になります。出血や激しい痛みが続く場合、早めに病院を受診することが大切です。治療の選択肢は多岐にわたり、症状や痔核の状態に応じて最適な方法が提案されるため、医師と相談しながら進めることが重要です。